「女子力」という単語が世に出始め、わりと月日が経ちました。いまだにその正体については方々で熱い議論が交わされています。
女子力なのか、ネッシーなのか、はたまたビッグフットなのか。各専門家達はその正体を血眼になって追っているとかいないとか。
例え火の中、水の中、草の中、森の中、土の中、雲の中、あの子のスカートの中にまで、様々な勢力でもって日夜努力を重ねている、という噂を聞きました。夢で。
ただ、ウィキペディアにはこう書いてありました。
《輝いた生き方をしている女子(一部の男子)が持つ力であり、自らの生き方や自らの綺麗さやセンスの良さを目立たせて自身の存在を示す力》
わからん。
もはや女子なのか、男子なのかすらわからん。
輝いた生き方ってなんだ。舐めとんのか、おい。
場末の酒場で飲んでる私はさぞ輝いとるぞ。それはもう、エレクトリカルパレードぐらいはすごいぞ。
そんなこんなで、その存在は未だ謎に包まれているわけです。
ただ私の中で一つ、その正体の一部を掴んでいます。それこそ
「ハンドクリームを塗るかどうか」
これです。
女子力の正体はわかりませんが、なんだかちゃんとしている女子はいつでも忍ばせているのです。そう、ハンドクリームを。
しかも薬局の片隅で埃をかぶっている、おばあちゃんの小銭入れみたいなキャップのやつではありません。
パステルカラーに花柄など、もはや勝負パンツくらいの華やかさ。もはや勝負パンツと呼んでよいのではないか、いやそれはウソ。
そのもはや勝負パンツに勝るとも劣らないハンドクリームですが、私は果たして塗るのかどうか
もちろん、塗りません。
なぜかというと、それはもう断然スマホが使いにくいからです。
塗った瞬間からヌルヌルの地獄が始まります。
「なんだこれ、悪魔の実でも食べた?ヌルヌルの実?」
なんの役にも立たんそれ、ただヌルヌルするだけ。ハイパーハイリスクノーリターン。
そんなもんは、あいつに任せとけ、オレンジのキャップのやつや。
私は気になるのです。
ハンドクリームを塗る女性のスマホがどうなっているのか?
今日ハンドクリームを塗りました。
厳密に言えば、ヴァセリンを塗りました。
するとどうでしょう、すぐさま私もヌルヌルの実の能力者です。
当然スマホはヌッルヌル。
画面もボディもヌッルヌル。
画面は指紋まみれ、汚い、すごい汚い。
女子力にあるまじき汚さ。
私は気になるのです。
ハンドクリームを塗る女性のスマホがどうなっているのか。
だから聞くことにしました。
ヌルヌルになったスマホを見つめ探します、女子力の高そうな人間を。しかし、なかなか見つからない、連絡できる相手。悲しき人脈の無さ。泣くな、私、ファイト、明日を見つめて生きろ。
もう見つからないのでは?と半ば諦めた矢先
発見しました
パステルカラーに花柄の、もはや勝負パンツくらいの華やかなハンドクリーム使いを。
そう、うちの母です。
やった!やっと見つけた!
私の心は踊りました。激しく踊りました。
MCハマーを。
ただ、私はあることに気付きました。
ガラケーやん?
そう、母はガラケー使い。
真相は全て闇の中。
女子力も、ハンドクリームを付けた手で触るスマホ画面の謎も。
まだまだ、この世には多くの謎が存在するのです。
《おしまい》