「大きいホットケーキを布団にして寝たらさぞ気持ちが良いだろうな」
メルヘルチックモードが発動すると、しばしば脳内に現れるホットケーキの布団。それは、あたたかくて、柔らかくて、甘い香りがする。お腹が減ったらちょっとつまんで腹を満たせる。食欲と、睡眠欲が同時に満たせる優れものだ。
コットンの白いワンピースに長い栗色の巻き毛、頬にはそばかすを散らしたチャーミングで活発な女の子になりたい。友達はユニコーン、森の泉には人魚が住んでいる。
だが、現実はというとヨレヨレのTシャツにユニクロのジーパン。髪はボサボサで顔は脂ぎっている。そばかすの代わりに吹き出物がチラホラ。友達は酒クズで、近所の川は日本有数の汚さ。
現実との乖離が凄まじい。
メルヘルチックモードは別名現実逃避モード。
お金のかからない無職の楽しみの一つ。
最近は金欠に拍車がかかってきました。
比例して加速するメルヘルチックモード。
ホットケーキの布団で寝てみたいし
コットンのワンピースを着たいし
栗色の巻き毛になりたいし
そばかすを散らした顔に屈託のない笑顔を浮かべたいし
ユニコーンにのって、森の泉の人魚へ会いに行きたい
だけども、それより強く私が欲しているものがあるんです。
それは
金
メルヘルチックモードは別名現実逃避モード。
それを上回る金欠の現実。
メルヘンよりも金をくれ。
メルヘルよりも金が欲しい。
ユニコーンが言ってる
「働きなさい」
と。
森の泉の人魚が言ってる
「ハローワークへ行きなさい」
と。
コットンの白いワンピースを着た私は何をしているかというと、ソファをあたためながら昼ごはんの事を考えている。
ユニコーンも人魚も呆れて見てる。
「ああ、金の卵を産むニワトリが欲しいな」
そしたら買うんだ、大きいホットケーキの布団。あたたかくて、柔らかくて、甘い香りがする。お腹が減ったらちょっとつまんで腹を満たせる。食欲と、睡眠欲が同時に満たせる優れもの。
メルヘンチックモードは別名現実逃避モード。
お金があれば叶うかも、メルヘンチックな妄想。
こうして、私の労働への意欲は日々向上しているのです(ソファをあたためながら)
《おしまい》